AI音声解説
再生ボタンを押すとAI音声のナレーションを聞くことができます。
紫苑美月は、本店を青山に構えるイタリアンで働く、次期マネージャー候補の26歳。
α至上主義の世の中で珍しくもヒートの起こりにくい特異体質のΩとして産まれた。産むだけの性に辟易し疑似α剤を飲みαと偽り生きてきた。勿論それだけの努力はしたし、世の中のΩのように弱々しくもなかった。
ある日、紫苑に異動話が持ち上がる。青山本店の有能なスタッフである紫苑の行く先は、なぜか赤字経営の小田原店だった。地元出身の紫苑ならではの抜擢だったのだが、経営不振の建て直しに与えられた時間は、なんと一年間。しかしながら、悪化の一途を辿る店にまともなシェフなど、居るわけもなく、シェフ不在の店では出来ることは限られていた。
地元の人が集まる箱根のお祭りに、出店を誘われた紫苑は、たった一人で祭りに乗り込んだ。
インスタ映えする、選べるクレープシュゼットは、目の前で繰り広げられるパフォーマンスを動画にとる人たちで溢れ、この当たりに当たった企画は、紫苑一人では到底こなせない忙しさであった。なかなか出ないスイーツに、徐々に観客の苦情もあがっていく。そんなとき紫苑のフライパンをゆっくり握る、色黒の手があった。
神無月柊、強烈なフェロモンを持つΩ嫌いのスーパーα。普段はα用抑制剤を常用する神無月であったが彼は大のΩ嫌いだった。
常に前向きに仕事をする紫苑に、元来パーソナルスペースの狭い神無月は、紫苑の思惑とは反対に、一気に距離を詰めていく。偶然にも神無月の家で薬をのみ忘れた神無月のせいで、軽いヒートを起こす紫苑は神無月にオメガだとバレてしまう。
紫苑の優しさに漬け込むように、愛に溺れる神無月を奈落の底に突き落とすような、魔の手が忍び寄る。
すれ違い、恋い焦がれる故に、素直になれない紫苑は、神無月の愛し方に、覚悟を決めるのだった。
前書き
この世には、男と女以外に第二の性、アルファ【α】・ベータ【β】・オメガ【Ω】と言うものが存在する。
平凡で八十%以上を占めるβに対し、企業やアスリート、アーティストなどのトップ層はαであらかた占められており、人口の約十%に当たった。
更に少ないのはΩであった。男女ともに、妊娠できる体の機能を持ち、三ヵ月に一度、ヒートと呼ばれる発情期が訪れる。酷いものになると、遠くからでもフェロモンがわかり、それに充てられたαの性犯罪は後を絶たない。
α至上主義の現代で、まさかのΩだと診断されたものの中には、発狂して自らの命を絶つ者、親に隔離されて外に出れなくなった者もいた。αがらみの性犯罪は誘惑した方が悪いと言われ、襲ったαが被害者になる事も決して稀な事では無かった。Ωの幸せは裕福なαのもとに嫁ぎ、股を開き、子をなすことだと言われていた。
現代とは正に、Ωと診断された者には生きずらい世の中である。
5月24日生まれ
神奈川県出身
玉川大学演劇専攻卒
イタリアンを専門に生きるBL作家
料理やワイン、サービスマンの絡む現代BL
趣味・ロード【観戦】・宝塚観劇・そしてご飯を食べるように日々BL
SМ、拗らせ、純愛、調教、オメガバース書いてます
ドエス甘々攻め×ツンデレ受けが人生のメインテーマです
書籍のご感想や著者へのご質問など何でもご自由にご記載ください。
(コメントの投稿にはFacebookへのログインが必要となります。)