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概説
青春実話小説。文章のきれもあり、読み応えがあり、この自伝小説を読む人が増え続けます。
中国生まれの母子家庭の少年、幼少期から大学受験に至るまでの青春の日々が、信州信濃の風土の中で波乱万丈に展開する。
エピソードを交えながら明るくリアルに描かれていて読み応えがある。
酒好きな真田信太郎は、学生時代の仲間と浅草の街で酒を飲み、やくざの親分と喧嘩・乱闘の末、喧嘩共犯の容疑で現行犯逮捕され、浅草署マル暴係の世話になり、留置場生活二週間。罰金4万円で釈放された。留置場生活のリアルな意外な風景が描かれていて面白い。
会社を創業して10年の妻子ある信太郎は二週間の留置場生活の中で、反省と懺悔の思いで、「一つの出合いによって人生が思いがけない展開をしていく素晴らしさ」「暗い世界から明るい世界に展開していく、少年の葛藤と出合い」を振り返ったのである。
作品講評
主人公「真田信太郎」の青春の日々の出合いと葛藤を回想した自伝的小説を拝読した。
酒好きな真田信太郎は、学生時代の仲間と浅草の街で酒を飲み、やくざの親分と喧嘩・乱闘の末、喧嘩共犯容疑で現行犯逮捕され、浅草の留置場に二週間拘留された後、罰金4万円で釈放されたのである。大学で刑法と刑事訴訟法を学んだ信太郎は学生時代から喧嘩無敗で、社会人になってから柔道武道館にも通い、地域ではソフトボールチームの監督をしているという設定になっている。
技術情報サービス会社を経営して創業10年なるという妻子ある信太郎は2週間の拘留生活の中、反省と懺悔の思いで、「一つの出合いによって人生が思いがけない転回をしてゆく素晴らしさ」「暗い世界から明るい世界に展開してゆく、少年の葛藤と出合い」を振り返ったのである。
幼少期、中学時代、高校時代、大学受験に至るまでの青春の日々が、育った信州信濃の風土の中で多くのエピソードを交えながら克明に描かれていて読み応えがある。
真田家の9人の子の中で、村でも評判の秀才だった長男の真一は上田蚕糸専門学校を卒業後、学校に残って助手、講師、助教授として養蚕・製糸工学の研究を続け、運動にも優れていた長身で美人の富子と見合い結婚し、南満州鉄道の柞蚕研究所に主任研究員として招聘される。
昭和20年4月、その父親の真一が36歳で病死した時、母親の富子は28歳、信太郎には二歳上の姉・美枝と二歳年下の弟・義彦が居たのである。
終戦から一年後、幼い三人の姉弟を連れて日本に引き揚げてきた富子が向かった真田家には祖父母と叔母の三人が住んで居て、真一亡き後、信太郎だけは真田家の跡継ぎの総領として真田家で暮らすことになり、母親と姉は母方の祖父・政光の近くに住み、弟は祖父の家に預けられる。
教員免許を持っていた富子は街の中学校の教員に採用されるが、若くして夫を失った母親・富子の、幼い子供三人を教育し大学まで進学させるという苦しい立場が幼い信太郎にはよく理解できていなかったようである。
●小学校1年生の秋、児童虐待の末に真田家を放逐された信太郎は、土建屋の武田組社長・武田蔵之助の強い要望で、孫娘・美代子の許嫁として養子縁組し、「武田信太郎」となる。
実母の富子は「信太郎の大学進学」を養子縁組の唯一の条件としたのである。
一代で財を築いた蔵之助には亡き本妻の他三人の妾が居て、亡き本妻の長女である「妙」には養子の康五郎を迎えて専務取締役として、次女の「優」にも養子を取って常務取締役にしている。
信太郎の許嫁となった美代子は妙夫婦の長女だったのだ。
ひ弱だった信太郎は養子として土建屋武田組で肉体的にも精神的にも鍛えられ、中学、高校ではガキ大将になり、一匹狼として徒党を組まず、安っぽい喧嘩をせず、義理人情に生きようとしていたのである。中学までは相撲中心に鍛えられ、その後はボクシングの訓練も受けている。
中学の卒業式で三年間担任だった春山先生が、養子として他家にはいり、母親や姉弟を離れて暮らすようになった信太郎の苦労を思いやり、将来のことを心配してくれていることを知った時の信太郎の号泣の様子を「自分に対する本能的悲しみの感覚」と的確に表現していて、心に響く。
武田家の養子になって九年後、武田本家の実権を握った二代目社長の養父・康五郎は、「信太郎の大学進学」という実母・富子との約束を反故にして、家業を継がせるために信太郎を強引に実業高校に入学させたのである。
それが原因で両家の協議の結果、養子縁組が解消され、上田の祖父・政光の家で、復籍した信太郎も加わった母子四人が一緒に暮らすようになる。小学校二年生の時に「武田姓」になった信太郎は、高校一年生で元の「真田姓」に戻ったのである。
「自分の存在など意味がないのか。大人が話し合って俺の人生は決まってしまう。俺の人生がいい方向に進むという保証もない」という信太郎の不安な胸中が良く描かれている。
小学校高学年のころから異性として互いに意識するようになっていた美代子とは、養子縁組解消後も密かに恋人関係を続け、富子が教鞭をとる中学校に越境入学していた美代子と信太郎は、時々、図書館で逢い、大学受験までの一年間は会わないという約束を交わす。
野球部を辞め、実業高校の商業課で専門科目を学びながら受験勉強をしていた信太郎は、上京して新聞配達をしながら予備校の午前コースに通い第一志望だった大学の法律科に合格する。
職安が斡旋してくれた中堅会社の社員寮に住み、昼間は大学に通い、生活費を稼ぐために時給制で働くことに決めた信太郎は、四月上旬には信濃の国に別れを告げて上京することになる。
女子高を卒業して四月から長野の短大に通うという美代子と図書館で再会した信太郎は、一年前の約束通り、市郊外の秋和温泉旅館で二人だけの卒業記念日を過ごしたのである。
大学生になった信太郎の(俺は出合い学部、阿弥陀くじ学科、アルバイト研究室、時には恋愛研究室だ。他人とは違う学生生活を送るぞ!青春放浪、旅の門出だ!)という言葉からも、親元を離れた解放感、それまでの硬派から軟派に転じるという晴れがましい心境が伝わってくる。
あらすじ
信州の少年の出会いと葛藤を描く小説である。暗い世界から明るい世界に展開していく。 真田信太郎は、たまたま学生寮時代の仲間と浅草の街で酒を飲みちょっとした不注意からやくざ相手の喧嘩は思わぬ方向に展開した。2週間以上浅草署に勾留されて大きな留置場で屈辱的な経験をする。
浅草署のマル暴課長とのやり取り、手錠を掛けられた屈辱感とは別に檻の中の生活は興味深かった。
信太郎は会社の経営者である。
檻の中に入ったことで、人生の展開が180度変わってしまうことがあると反省、懺悔する。安っぽい喧嘩をしてしまった。
長い勾留期間に檻の中で過去の青春の日々を振り返る。
檻の中から過去に遡って物語は展開する。
終戦と期を一にして中国で父が病死、母と幼児3人は日本に引き上げてきた。父亡き後の姑は冷たく四人の生活は帰国早々苦しかった。
信太郎だけは真田家の跡継ぎの総領として母親と離れて姑、小姑と生活するが、児童虐待の末放逐される。武田組社長の強い要望で孫娘の許婚として養子縁組をする。母は「信太郎の大学進学」を養子縁組の唯一の条件とした。姉弟の中で捨て牌にされた信太郎は何処かで母を許していない。思えば、幼児期から母親と離れて生活し孤独な日々を過ごした。青春の日々は悲しみと喜びの繰り返しだ。
ひ弱な信太郎は土建屋で肉体的、精神的に鍛えられ、中学、高校でガキ大将になる。一匹狼の信太郎は徒党を組まず、安っぽい喧嘩をせず、義理と人情に生きようとする。
9年後、2代目社長の養父は「大学進学」の約束を反古にし、家業を継がせるため強引に実業高校に入学させる。それが原因で両家協議の結果、養子縁組は解消された。
信太郎は実業高校の珠算、簿記など専門科目の授業を受けながら進学を目指す場合のハンデに悩むが大学進学を諦めきれずに上京し、新聞配達をして予備校に通う。
出会いを求めて扉を叩く。まさに人生は阿弥陀くじの如し。
一つの出会いによって人生が思いがけない展開をして行くすばらしさに信太郎は感動する。
※この小説はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありませ~ん!
著者:彦 信之(ひこ のぶゆき)
長野県上田市出身
中央大学第一法学部法律学科卒、
上場会社勤務、労組設立初代書記長就任
電子リサーチ会社代表取締役、電子出版会社代表取締役歴任
公益法人理事長
市内柔道クラブOB 講道館柔道弐段
岡田ゆたか(絵)絵本作家
山形県山形市出身
明治大学政経学部経済学科卒
日本絵本賞の手作り絵本コンテストで文部大臣奨励賞を受賞
東洋美術学校に入学
「ぼくの町」で絵本にっぽん新人賞受賞
著書多数
講道館柔道弐段
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