ミドルエイジの青春 ご購入はこちら オリジナル改訂版
NYにいなくともアメリカ通になれる1冊 本の概要・紹介文

『ミドルエイジの青春』 オリジナル 改訂版

ニューヨーク暦30余年を持つ著者だから書けた、恋愛+情報小説の決定版。
NYにおけるビジネス情報、ナイトライフ、業界情報、9.11の衝撃、そして大統領選挙の現地情報!

NYにいなくともアメリカ通になれる1冊。

まえがき

奴隷娘リューに扮する韓国人ソプラノ歌手・金美蘭が王子カラフに、恐怖の姫トゥーランドットへの求愛を思いとどまるようアリア「お聞き下さい、王子様」を熱唱すると、満場の観客から熱烈な賛美の拍手が起こった。ブラボーの掛け声も飛んだ(本場イタリアでは女性歌手にはブラバーと声をかけるが、ここアメリカではそのような器用なことは聞かれない)。

ここは世界一の観客席数を誇るニューヨークのメトロポリタンオペラハウスである。略してメットともいう。トラベルエージェントのマイクはフランスのニースから飛んできた英子と、敬愛するオペラ作曲家・プッチーニの最後のオペラとなった『トゥーランドット』をドレスサークルのボックス席で観ているのであった。ボックス席は舞台に向かって左右にあるが、ふたりの席は左側の最前列にあった。

英子は五年前にオペラハウスで知り合ったガールフレンドだ。その日はクリスマスの前週でニューヨーク市内のホテルは数年来満室の状態になるシーズンであった。

オペラハウスではワグナーの『トリスタンとイゾルデ』 が上演されていた。このオペラは非常に人気が出ており、また金曜日の夜ということがチケットの入手を更に困難にさせていた。マイクはオペラハウスのチケット入手方法を熟知している。そしてこのチケットはオペラハウスの正面玄関にあたるリンカーンセンターの広場で買うことに決めていた。

その日は一シーズンに一回あるか、ないかと言う、いわゆる、買い手のみの日で、よく見られる売り手の多い光景が見られず、すぐに異常さに気付かされた。

英子はその時、五十名ほど並んでいたキャンセル待ちの列にいた。シャイなマイクはめったに女性には声をかけないのであるが、その中で一際目立った英子に注目した。黒色のスーツに黄金色のボタンがよく似合ういでたちで、整った色白の顔を少しの興奮からか薄紅色に染め上品な優雅さを匂わせていた。普段、優雅さとは縁のない人でも、なぜか、オペラハウスに来ると想像的な優雅さを持ち合わせてくるように思われるが、英子の場合はいつしか身についたもののように感じられた。

つい自然にマイクは英子に近づき、声をかけた。

「いかかですか。チケット、手に入りそうですか?」

英子は不安と期待と緊張の中にいた為か、嬉しそうに反応した。

「こんなに大変とは想像もしていませんでしたわ。私はこのオペラだけを観に日本から飛んで来たのですから。もし入手できなかったら、どうしましよう?」

マイクはしばらく沈黙後、

「今晩はここにならんでいても無駄でしょう。まず、キャンセルが出ないとおもいます。外の広場で急に何かの事情で観られなくなった人が売ってくれるのを買うのがベストです。さぁー一緒に広場へ行きましょう」

と英子を誘った。英子はすこし迷ったようだが、マイクの誘いに同意して広場へと一緒に出た。

そのプラザには既に数十名のオペラバフ(熱狂者)が入手のチャンスを窺っていた。突然、品の良い老婦人がチケットを一枚、英子の面前に見せた。瞬間、多数の紳士淑女がそのチケットに注目した。が、英子はその老婦人へほぼ同時に、「アイ ウオン イッツ、プリーズ ギブ イッツ ミー」と発音よく迫力のある声を発した。この品の良い老婦人は売ってあげたい人を物色していたのかもしれない、とマイクは思った。優しい眼差しで英子にそのチケットを「定価」で手渡した。ドレスサークルの百十番、正面中央の良い席である。多分シーズンチケットを購入している方なのであろう。英子は八千五百円相当のドルを「サンキューソーマッチ」と言って手渡した。「エンジョイ・ジ・オペラ」とその老婦人は英子に愛情を示して去って行った。このオペラに四万円まで出す覚悟をしていた英子にとって夢のように安いチケットであった。マイクは英子を祝福した。

「嬉しいですわ。わざわざ観に来た甲斐がありましたわ」

と英子は歓喜の表情を表した。英子の方に注目していたオペラバフたちはチケットが一枚しかなかったことを悟り、他なる場所へと移動した。その後祈る気持ちで売り手が現れるのを開演間際まで待ってくれている英子に、これ以上心配をさせてはいけないと判断したマイクは、英子にもう劇場に入るよう促した。英子はマイクに済まなそうな気持ちと嬉しさを隠しきれない複雑な表情を浮かべ、マイクに礼を述べオペラハウスへと向かった。マイクはこの女性と「もう一度会いたい!」衝動にかられ、走って行き、英子を捕らえ、名刺を差し出し「私はこういう者です。また、何かありましたら、ご連絡下さい」と伝えた。英子は再びマイクに礼を述べ、奥へと姿を消して行った・・・

著者紹介
本井慶次郎

本井慶次郎 (もといけいじろう)

1947年1月、徳島県に生まれる
1971年6月、ニューヨークへ来る
1973年6月、日系旅行会社に就職
2017年12月、同社を退社、即、執筆活動に専念

著書
「ミドルエイジの青春」  新風舎 2005年
「コロンブスとカリブ海」 文芸社 2011年

改訂版「コロンブスとカリブ海」 
アマゾン キンドル 2018年
「ミドルエイジの青春」 オリジナル 
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