ラガーマン・鋼のパルス ご購入はこちら ミステリー小説
圧倒的活躍を見せたラガーマン 本の概要・紹介文

圧倒的活躍を見せたラガーマン佐和がグランドを追われた。嫉妬と策謀渦巻くチーム内。同じころ、佐和の妹が亡くなる。疑いをもたれ選手生命を絶たれた佐和はひっそりと暮らしながら、やがてカフェを開く。一方、元刑事福永は当時の真相を調べていた。そして佐和の前に過去を知る者が次々と現れる。ある日、佐和は鋼製レプリカのラガーボールが渡される。事件直後に違法爆発物製造で爆死した友人萩野の父親からだった。無実だった佐和と同様に、萩野は女子大生の轢逃げ事故で疑われていた。C-4爆薬で政府転覆をを目論んだという官憲の結論。やがて捜査線上に共犯とみなされた萩野の友人小佐野が浮かぶ。ラガーマン萩野がなぜ加担したのか?それとも主犯だったのか?学生の夏目愛海が佐和に接近し過去を探ってきた。昔の恋人郁美の所在や愛海の正体に佐和は翻弄される。福永や愛海の話から大学内に漂う黒い噂は当時からあったことを知る佐和。やがて黒幕が浮かぶ。それに気づいた時、意外な人物が復讐を始めた。

書籍のプロローグ

フォワードを組んだプロップ古川が叫んだ。

鋭いタックルが襲いかかる中、キャプテンである彼は怯まずに当たり返すとラガーボールを抱えて走った。

「相手がでかくても気持ちで負けるな!」

チームメイトの声が耳に入った。相手チームとの体格差があるのは明らかだった。体重差は8キログラム。背丈は6センチ以上も差があり、小粒のチームで対等に戦うには無謀だった。

後半十五分、風下ながらラインアウトからナンバーエイトの安達がボールを確保してチャンスが拓けた。センター石田、ウイングの佐和へとボールが繋がった。この日の初トライだった。それが相手に火をつけてしまった。慶明大学は大学有数のラグビーの名門だった。長年覇者として君臨してきている。その相手に真っ向勝負を挑んだかたちになった。慶明の攻めが激しさを増した。誰もが何かしら傷を持ち、身体に痛みを背負った。

終了直前、ロックの川尻が額を割り出血した。メンバー交代せざるを得ない状況になった。弱気な表情を見せた瞬間、慶明の中央突破を許しトライを与えてしまった。二〇対二四と逆転された。残り時間はロスタイムを入れて四分。古川の指示が全員に送られた。ワントライを狙う。リーダーとしての自覚を忘れない奴。紳士たる品格を兼ね備えた男だ。佐和に向けた古川の視線は「お前が決めろ」と訴えていた。相手ゴールラインまで5メートルのところで審判はスクラムを指示した。スクラムハーフの大島から石田にボールが渡ったところで相手ディフェンダーがタックルをしかけてきた。味方数人で石田を抱え込むようにモール状態のまま進む。その大きな塊はゴールにぐいぐいと突き進んだ。それを阻むように何発もの相手タックルが鋼の塊と飛び込んできた。モールがゴールライン上に達する寸前、「佐和!」と声が飛んだ。モール後方にいた佐和は足もとに流れたボールを掬い上げると、それを抱えてゴールラインに飛び込んだ。笛の音が聞こえた。トライ成功の瞬間だった。安達や古川たちの満面の笑顔があった。国立競技場を揺るがすような怒号にも似た声があがった。二五対二四。逆転勝利だった。最後のゴールキックも決まり、古豪、慶明大学を破って大学日本一になった。

あの日、城東大学ラグビー部が初めて大学日本一決勝に進めたのは、ひ弱な体力にも関わらず、運とチームワークの良さがあったからだと報道は伝えていた。

運であそこまでは辿り着けない。毎日毎晩、ヘトヘトになるまでグランドを走りまわった。コーチの罵声ともいえる檄に耐えてきたことが成果に繋がったのだと、当時のみんなは思っている。

秩父宮ラグビー場の準決勝に比べ、国立の決勝はあまりに雰囲気の違ったものだった。それゆえ印象に残るものだ。

わたしにも、こんな煌びやかな陽のあたる時代があったのだ――。

佐和優は夜空を見上げて思った。今夜も当時の光景が蘇ってしまった。いつになったら過去の栄光から足を洗えるのだろうか。付きまとう栄華だけでは、今の自分は飯を食っていけない。だが、自分に残された唯一のものは、過去に鍛えられた強靭な肉体だけだった。だが、時が経てば誰も振り向いてはくれないものだ。

過去を背負うなかれ!そう言い聞かせても、忘れられない記憶が強引に佐和を鞭打つのはなぜだろうか。割り切れない思いが心の隅に存在していることは確かだ。その理由が栄光の日から数週間後におきたことも、未だに忘れられない事実として残っていた。

著者紹介

赤石紘二(あかいしこうじ)
東京都北区滝野川出身。メタボ系で少々いい歳。
青山学院大学卒業後、防衛関係、教育関係職、自営業等を経て現在に至る。
江戸川乱歩賞、小説現代長編新人賞など多くの賞に現在も応募中。
主にミステリー作品を制作しているが、時代小説、SF小説も手掛ける。

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