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孫に語る歴史物語

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本の概要・紹介文

『孫に語る歴史物語』

文化社会学の観点から日本史の謎に迫る。
人間と社会とのダイナミックな相互関連によって、歴史はどう動いてきたのか?
キリスト教国でもない日本がこれだけの経済成長を遂げることが出来たのは、どうしてなのか?
バブル崩壊後の経済の停滞は何故起こったのか?
日本の将来に希望はあるか?

これらの謎に迫る。

文化社会学の考え方こそ21世紀を生きるための哲学。

書籍冒頭のご紹介

世界史編

僕はある私立大学の附属高校に通う高校生です。僕の家族は、母と母方の祖父の三人家族です。僕は祖父を『爺(じっ)ちゃん』と呼んでいます。爺ちゃんは八十五歳ですが、大腸がんが他の臓器にも転移し、あと三年ほどの命と言われています。爺ちゃんは自分の寿命を受け入れているのか、がんの告知を受けたあとも今までと少しも変わらない様子です。 
その爺ちゃんが、僕に「私がいなくなる前に、何でもいいから聞きたいことがあったら遠慮なく聞きなさい。」と言ってくれました。僕も前から爺ちゃんには聞きたいことがいっぱいあったので、まだ元気なうちに聞いてみようと思いました。
僕はまず、自分が一番気になっていることを聞きました。
「人間は、死んだらどこに行くの。」
「どこにも行かないと思うよ。人間も自然の一部なので、自然に帰るのだと思うよ。」
「えっ、じゃ天国も地獄も極楽もないの。神様や仏様もいないの。永遠の魂もないの。」
「そうだね。私はないと思っているよ。」
「爺ちゃんは、お医者さんから、あと三年くらいの命と言われているんでしょ。怖くないの。」
「私は、良(りょう)寛(かん)さんの次の言葉がとても好きなんだ。
それは、『災難に逢ふときは災難に逢ふがよく候。死ぬる時節には死ぬがよく候。是はこれ災難をのがるゝ妙法にて候』という言葉なんだけれども、少しでも良寛さんのこの境地に近づきたいと思いながら生きてきたんだ。そして、私は今ここで、翔太と話をしていて、とても幸せだよ。考えてみると、地球上に生命が誕生した四〇億年前から現在まで命がつながってきて、その一カ所でも切れていれば、私は存在していないわけだ。今、ここで生きているということは、それだけで気の遠くなるような、奇跡的に幸運なことだと思う。だから、今、ここに生かされていることに感謝し、この一日一日を喜びを持って陽気に生きていきたい。そのように生きていけば、最期の時に微笑みながら死んでいけるのではないかと思っているよ。」
「古代のユダヤ人たちがエジプトを脱出してパレスチナに入って行ったとき、パレスチナに住んでいた人々を皆殺しにしろと神が命じた、というようなことを本で読んだことがあるけど、その神も実はいなかったということなの。」
「そうだね。」
「それじゃ、神の名のもとに、正義だとして行われてきたすべてのことが、実は単なる人間の行為にすぎなかったと言うの。」
「ただし、それぞれの行為は、その時代の枠組みというものを考慮する必要があると思う。
これから、そのことについて、文化社会学の考え方を話してみることにするね。
翔太には、少し分かりにくいと思うので、回り道して説明することにしよう。まず、人間についての根本的な理解が必要になるのだけれども、そのために、人間を他の動物と比較してみることにしよう。」
「どんな動物と比較するの。」
「ごく単純な動物ということで、森の中に棲むダニと比較してみることにしよう。ユクスキュルの著作・『生物から見た世界』に詳しく載っているのだけれども、このダニは目も耳もない。そして、交尾後のメスのダニは、森の中の灌木の小枝の先まで進むと、そこにぶら下がって動物が下を通るのをずっと待ち続けるんだよ。」
「目も耳もないのに、どうして動物が来たと分かるの。」
「どうしてだと思う。」
「臭いかな。」
「その通り。哺乳類の動物は人間も含めて、身体から酪酸という物質を出していて、その酪酸の臭いという刺激に反応して落下するんだ。つまり、酪酸の臭いという特定の刺激が落下を命じる信号として作用するんだね。」
「それは誰かから教わったの。」
「いい質問だね。それは親から教わったわけではなく、動物の血を吸う行動、地面に落下して卵を産む行動などすべての行動が、それぞれ特定の刺激に対する特定の反応としての行動なんだ。こういう行動の仕方を、普通なんて言う。」
「本能かな。」
「その通りだね。ダニは百パーセント本能、つまり、遺伝的に獲得した行動の仕方だけで生きているんだ。」
「人間にも本能はあるの。」
「生まれてすぐの赤ちゃんの哺乳行動や自動歩行など、人間にも本能はあるのだけれども、そういった本能による行動の仕方は、大体は二、三カ月で消失してしまい、人間は歩き方をはじめ行動の仕方・生活の仕方をすべて学習していかなくてはいけないんだ。」
「赤ちゃんがどうやって学習するの。」
「赤ちゃんを養育するのは、必ずしもその子の母親とは限らないけれども、一応、母親ということにしよう。人間の赤ちゃんは、生まれてすぐには歩けないよね。歩くまでに一年くらいかかってしまう。だから、母親の保護なしには生きていけない。擬似胎内環境とも言える環境で生活することになるよね。そのようなことから、母子の間に感情移入の絆が生じ、その絆を通して赤ちゃんは母親の感情のパターンの影響を強く受けることになるんだ。つまり、何に対して、どのように感じるのかという感情のパターンの原型ができていくんだ。」
「その感情のパターンは、個人によっても違いがあるけれど、民族によっても違いがあるというわけだよね。」
「その通りだよ。母親との感情移入の絆を通して、その民族の生き方、つまりその民族の文化の基本となっている感情のパターンの鋳型にはめられていくことになるんだ。」
「感情のパターンについて、もう少し詳しく説明して。」

・・・

目次

  1. 世界史編
  2. 日本史編
    1. 原始・古代
    2. 中世
    3. 近世
    4. 近代・現代
  3. 宗教社会学編

付録

  1. 「二度生まれの男・パウロ物語」
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